東京地方裁判所 昭和45年(借チ)1002号 決定
〔主文〕1 申立人が別紙目録記載の改築をすることを許可する。
2 申立人は相手方に対し金七七一、〇〇〇円を支払え。
3 本裁判確定の月の翌月から本件賃貸借契約の賃料を一か月3.3平方米当り金四五円と定める。
〔理由〕一 本件申立の要旨
1 申立人は昭和一五年一二月二〇日、東京都葛飾区柴又四丁目一二五番一、宅地839.83平方米(254.05坪)のうち、297.52平方米(90坪)(以下「本件土地」という。)を当時の土地所有者から賃借し、その後相手方が賃貸人たる地位を承継し、昭和三五年一二月一九日契約の更新をし、その契約期限は昭和五五年一二月一九日までである。
2 申立人は、本件土地のうえに別紙目録記載の三棟の現存建物を所有しているが、このうちの一棟を同目録記載のとおり改築しようと計画し、本件賃貸借契約において増改築禁止特約の存否が不明であるが、右改築につき相手方の承諾を求めたがえられないのでこれに代わる許可の裁判を求める。
二 当裁判所の判断
1 取調べた資料によれば、申立人は、現在相手方から本件土地を賃借し、ここに別紙目録記載の現存建物三棟を所有していること、本件賃貸借契約において増改築禁止の特約の存否は不明であるが、相手方の承諾をえないまま改築をしようとすれば、右特約の存否をめぐつて紛争の生ずるおそれがあることが認められ、右事実によれば、本件申立はその利益があり適法である。
しかして、申立人の改築計画は土地の利用上、法令の制限上相当であり、他にこれを不当とすべき事由は存しないので本件申立はこれを認容すべきである。
2 附随の処分について判断する。
鑑定委員会は、申立人に金八一六、四〇〇円の財産上の給付をさせ、かつ地代を月額3.3平方米当り金四五円にするを相当とし、その財産上の給付額の算定方法として、改築前の建物と改築予定建物の各賃貸による純収益を算定したうえ、その増加分の二分の一を地主に配分すべきものとしている。右のごとき収益増に着目した算定方法は傾聴にあたいするものがあるが、賃借人が、賃借地のうえに契約の制限内で建物を建て収益をはかることは賃借人の権限に属し、その収益の一部を当然に土地ないし賃貸人に帰属させるべき合理的な理由はない。
増改築の申立許可の裁判における財産上の給付額は、右裁判により蒙むる賃貸人の不利益を賃借人の受ける利益の範囲内で調整することにあるというべく、これを本件においてみると、本件改築は、既存建物中の一棟をとりこわし全面的に改築するものであり、これにより右建物の朽廃時期を遅らせ、賃貸人に朽廃による借地権消滅の期待を減じさせる反面、賃貸人にこれを応じた利益を与える。そこで右利害を調整するため申立人に財産上の給付を命ずるのが相当であり、その額は、既存建物が相当老朽化していること、本件賃貸借の経緯を考慮したうえ、なお従前の裁判例に徴し、前記資料による本件土地の更地価格(3.3平方米当り金二四五、〇〇〇円とする。)の3.5%にあたる金八、五七五円、総額金七七一、〇〇〇円(千円以下切捨て)を相当とする。
賃料は、本件土地の利用効率の増大にともない増額すべく、その額は鑑定委員会の意見に従い、本裁判確定の月の翌月から一か月3.3平方米当り金四五円と定める。(筧康生)
目録
(現存建物)
東京都葛飾区柴又四丁目一二五番地
(1) (家屋番号四〇番)
木造瓦葺平家建居宅
13.25坪(43.80平方米)
(2) (家屋番号三九番)
木造瓦葺二階建居宅
一階 24.25坪(80.16平方米)
二階 6.25坪(20.66平方米)
(3) 未登記
木造瓦葺居宅
(改築計画)
前記(1)の建物を取りこわし
カラー鉄板瓦棒葺二階建店舗、共同住宅
一階 72.71平方米
二階 66.10平方米
を建築する。